そもそも
自己肯定感とは?
ありのままの自分を肯定する感覚のことを「自己肯定感」と言います。1990年代に生まれた比較的新しい言葉であり、最近、特に若い人のあいだで使われる機会が増えています。
自己肯定感は、他人と比べたりせずに、自らをかけがいのない存在として認め、前向きに生きていくために大切な感覚です。
この自己肯定感が低いと、「自分はダメな人間だ」「まわりより劣っている」という不安が大きくなり、新しいことにチャレンジしたり、明るく生きるということが難しくなります。
自己肯定感が高すぎて慢心が生まれるという側面もありますが、やはり低すぎることが社会生活を送る上で問題になりやすく、実際に悩んでいる人も多くいます。
自己肯定感チェック
- 人からどう思われる・評価されるかが気になって、物事に消極的になってしまうことがある
- 人からどう思われる・評価されるかが気になって、職場に行けない
- 理想の自分と現実の自分の格差に、しばしば落ち込んでしまう
- 物事にチャレンジする前から失敗することばかり考えてしまう
- 失敗した時に、自分を責めてしまうことが多い
- 時々、自分がものすごく性格が悪いような気がする
- いつも自分は人に巻き込まれてばかりいる、迷惑ばかりかけられていると感じる
- 他人が思うように動いてくれないとイライラする
- 配偶者や恋人を束縛してしまう、重いと言われる
- 恋人と別れる時、仕事を辞める時の理由がいつも一緒
上記10個の項目について、いくつ当てはまるかによって、おおよその自己肯定感の高さを判定できます。
0個:自己肯定感が高い
1~4個:自己肯定感は普通
5~7個:自己肯定感が少し低い
8~10個:自己肯定感が低い
自己肯定感が
低い人の特徴は?
自己肯定感が低い人の特徴をご紹介します。
自分を卑下することが多い
「自分なんてどうせ駄目な人間だ」「なんのとりえもない」といったように、自分を貶めるような考えをしがちです。何かにチャレンジして失敗した時に、「やっぱりな」という安堵に似た落胆、「チャレンジしなければよかった」という後悔を覚えるケースも目立ちます。
他人と比較ばかりしてしまう
「あの人のようになりたい」という気持ちが努力の原動力となったり、「あんなふうになっては駄目だ」と反面教師にしたりと、他人に目を向けその人について考えるのは役に立つことではあります。
しかし、他人と比較して自分の駄目なところを嘆いていても、何も変わりません。特に、色んな人の華やかな部分ばかりに目を向けてしまう人は、自己肯定感が低いことが多くなります。
失敗した時のことを考えてしまう
自己肯定感が低い人は、何か課題を目の前にした時、自分が失敗することばかり考えてしまいます。努力を重ねていても「自分は駄目だ」という気持ちが根本にあるため、どこかで折れてしまったり、やる前から諦めてしまうことが多くなります。
完璧主義・真面目
意外に思われるかもしれませんが、完璧主義の人や真面目な人の中にも、自己肯定感が低い人が少なくありません。
まわりに迷惑をかけたり、少しでもアラが見つかると、「駄目だった」と考えてしまうのです。人から見れば失敗ではないのに、自分では失敗だと思っているため、だんだんとチャレンジすることが難しくなっていきます。
自己肯定感が
低くなる原因は?
自己肯定感が低い人は、「自信がないからチャレンジできない→チャレンジできない・失敗するから自信を失う」という悪循環に陥りがちです。
そしてその根本にあるのは、過去の失敗へのこだわり・トラウマ、コンプレックスといった要因です。過去の失敗が頭から離れずまた失敗してしまうことへの恐怖感が強い、親や教師に叱られてばかりいたために自分は何もできないと思い込んでいるといったケースです。
また、近年は少しずつ改善されていますが、協調性を重視し個性への配慮が不足しがちな日本の社会(職場・学校・家庭)も、自己肯定感が十分に育まれることの妨げになっていると言われています。
自己肯定感が
低すぎるとどうなる?
病気になることも…
自己肯定感が低すぎると、どのようなことが起こるのでしょうか。
主なケースについて、ご紹介します。
人間関係をうまく築けない
自己肯定感が低い人は、自分の考えを主張することに抵抗を感じます。また、明確に指示を出したり、アドバイスをしたりすることも苦手です。自分は駄目だ、間違っているといった思い込みが前提にあるためです。
主張や指示も過度になると問題になることがありますが、少なすぎる・曖昧である場合にも、コミュニケーションの不足から、人間関係をうまく築くことが難しくなります。
職場や学校での評価が得られにくい
何をやってもうまくいかないという思い込みが根底にあるため、「言われたことしかできない(やらない)」ということが多くなり、必然的に職場や学校での評価は得られにくくなります。
“世渡り”という言葉がありますが、特に社会に出てからは“世渡り”の上手さが評価(昇給や給与)に反映されやすいため、これによりさらに自己肯定感が低くなり、悪循環に陥ってしまいます。
精神的な問題・病気
先述したような人間関係を築くことの難しさ、評価の得られにくさから、大きなストレスを抱えるケースが少なくありません。ストレスやさらなる自己肯定感の低下へとつながり、悪循環へと陥ります。
うつ病や不安障害、パニック障害などを発症してしまうこともあります。
自己肯定感を
高める方法・コツ
自己肯定感は、考え方や行動を改めたり、自分のまわりの環境を整えることで、今より高めることができます。
「自己肯定感が低い」ということを理解する
まずは自分の自己肯定感が低いことを理解しなければ、対策を講じることはできません。
客観的な視点から、自分を卑下するような言動をしていないか、他人と比較して落ち込んでばかりいないか、完璧にやり通そうとし過ぎていないかといったことを振り返ってみましょう。
信頼できる人に相談し、その人からはどのように見えているのかを教えてもらうのも良いでしょう。
自己肯定感が低くなった原因・きっかけを明確にする
自己肯定感が低くなった原因やきっかけを明確にすることで、自分への理解がより深まります。
過去の失敗、トラウマ、コンプレックスなど、原因となりうる経験について振り返り、その見当をつけましょう。過去をなかったことにはできませんが、原因を絞り込むことで、今の自分という人間がどのように形成されたのかを把握することにつながります。
自分の長所、成功体験を思い出す
自分の長所や成功体験を思い出してみます。紙に書き出してみるのも良いでしょう。
「優しい・真面目」「〇〇が得意・好き」「遅刻や欠席をしない」「作文で表彰された」など、なんでも構いません。また、人と比べて優れているかどうか、という点も気にする必要はありません。
こうして長所・成功体験を思い出し記憶を強化することで、「自分にもできるんだ」という気持ちが呼び起されます。
失敗をおそれずチャレンジしてみる
自己肯定感の低い人は、失敗を実際以上に大きく考えてしまいます。成功している人も失敗をしている、人はまわりに迷惑をかけずには生きていけないといった当たり前のことを思い出し、小さなことからで構いませんので、思い切ってチャレンジしてみましょう。
おすすめなのは、「好きなこと」でチャレンジを繰り返すという方法です。好きなことは、失敗をしたからといってそう簡単に嫌いにはなりません。趣味、スポーツなど何でも構いません。
応援してくれる人のいる環境をつくる
人からの応援は、時に自分の意志以上に大きな力となります。「こんなことを頑張っている」と家族や友人に話したり、趣味のサークルに入ったりすることで、応援してもらえる環境がつくれます。
職場でそういった環境をつくるのは難しく思えますが、まわりの人を頼ってみるというのも一手です。自己肯定感が低い人は、人に仕事を頼むということがあまり得意ではありません。しかし、助けてほしい時に頼ることで信頼関係が生まれたり、頑張っていることを知ってもらえたりといったメリットもあります。助けてもらったら、次にその人が困っている時に助けてあげる――むしろ会社は、そうして協力して何かを成し遂げるために存在するものであるはずです。