- 強い恐怖と不安で外出が不可能な
パニック障害 - パニック障害の原因は?
- パニック障害になりやすい人の特徴
- パニック障害の症状
- パニック障害の診断基準
- パニック障害の治し方
- パニック障害の人に
言ってはいけない言葉は?
強い恐怖と不安で外出が
不可能なパニック障害
パニック障害とは、身体疾患がないにも関わらず、突然の動悸や呼吸困難、めまいといった発作(パニック発作)を繰り返し、発作への不安から外出や乗り物への乗車が困難になる病気です。電車や飛行機、車といった乗り物の中だけでなく、美容室や歯科医院、会議室など、閉鎖的な空間で発症することが多いものの、そこから出てホッと安心した時に発症するケースも見られます。
長引くと、うつ病を合併したり、外出・出社ができないなどの社会的困難に陥ったりすることもあります。国内では100人のうち1~2人に発症する病気であり、決して珍しいものではありません。早期治療により完治を目指すことも可能です。
パニック障害の原因は?
パニック障害の原因については、未だはっきりとしが分かっていません。
しかし、脳幹部での何らかの異常によって、本来は命を守るための「脳のアラーム(警告)機構」が障害されるために発作が起こるのではないか、という指摘があります。
その他、ノルアドレナリン、セロトニン、GABA(r-アミノ酪酸)、グルタミン酸などの脳内の神経伝達物質、体質なども発症と関係していると言われています。
パニック障害に
なりやすい人の特徴
以下のような性格・傾向を持つ人は、そうでない人と比べるとパニック障害を発症しやすいと言われています。
完璧主義、真面目
仕事や勉強だけでなく、多くの人が手を抜いてしまいそうなことまでしっかりと取り組む人は、どうしてもそのキャパシティーをオーバーしてしまうことが多くなります。無理をすることも多く、また完璧にこなせなかった場合には過剰に気にしてしまうため、多大なストレスを感じます。
感受性が高い
楽しいもの、きれいなものに対して他の人より深く感動する感受性の高い人は、その一方で自己・他人の辛さ・悲しさにも敏感です。ネガティブなことが続くと落ち込んで過ごす時間も長くなり、徐々にストレスが溜まっていくものと考えられます。
まわりを気にする
まわりに気遣いができる、あるいはまわりの目を気にすることは、円滑な社会生活を送る上で重要な能力です。
しかしそれも過剰になると、先回りをしすぎて過剰な心配や不安を抱え込んだり、まわりからの評価にビクビクしたりといった状態に陥り、ストレスも大きくなります。
こだわりが強い
こだわりが強い人は、自分の好きなこと、得意なことにはやりがいを感じる一方で、嫌い・苦手な課題を前にした時に強い不安を感じることが多くなります。また実際にその課題をうまくクリアできなかった場合に、激しく落ち込んだり、自信を失ったりと、大きなストレスを抱えてしまうことがあります。
過労・睡眠不足
仕事などで疲れ切っている人、睡眠不足の人は、そうでない人よりパニック障害を起こすことが多くなります。
疲労物質として知られる乳酸が、パニック障害を引き起こす原因の1つになると言われています。
うつ病などの既往歴
以前にうつ病になったことのある人は、そうでない人よりパニック障害を発症する割合が高くなります。
その他、自律神経失調症にも同様の傾向が見られます。
パニック障害の症状
- 動悸、息苦しさ
- 不安、恐怖感
- 吐き気、嘔吐
- 発汗
- めまい、ふらつき
- 頭から血がひいていく感じ
- 胃の痛み、腹部の不快感
- 自分が自分でない感じ
上記のような症状を伴う発作が突然現れ、そして繰り返されます。
パニック障害は、以下のような経過をたどります。
パニック発作
突然、不安、動悸や息苦しさ、吐き気、めまいなどの症状に襲われます。
予期不安
発作が治まった後も、「またパニック発作が起こったらどうしよう」という強い不安が付きまといます。
広場恐怖
予期不安から、パニック発作を起こした場所・空間へと足を運べない、留まれないといった状態に陥ります。
電車に乗れず出社や登校ができないばかりか、外出そのものが困難になるケースも見られます。
パニック障害の診断基準
以下の13項目のうち4項目以上の症状が同時に起こり、約10分後に症状のピークを迎え、約30分後に収束するものが「パニック発作」と認められます。そしてそのパニック発作が一定以上の頻度で出現する場合に、「パニック障害」と診断されます。
- 動悸、心悸亢進または心拍数の増加
- 発汗
- 身震いまたは震え
- 息切れ感または息苦しさ
- 窒息感
- 胸痛または胸部不快感
- 嘔気または腹部の不快感
- めまい、ふらつき、頭が軽くなる感じ、気が遠くなる感じ
- 現実でない感じ、離人症状
- コントロールを失うことに対する恐怖、または気が狂うことに対する恐怖
- このまま死んでしまうのではという恐怖
- 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
- 冷感または熱感
パニック障害の治し方
パニック障害の治療では、まず発作が起こらない状態を維持することに重点が置かれます。
薬物療法によって発作を抑えながら、苦痛・不安に対する精神療法を行っていきます。
薬物療法
セロトニンという神経伝達物質に作用する「SSRI」、少量の「抗不安薬」などを用います。
服用を継続することで、パニック発作を抑えていきます。
精神療法
パニック障害における精神療法では、主に認知行動療法を行います。パニック発作の原因を探り、その原因に対する対処法を説明・指導します。
一例をあげると、「電車に乗ったから発作が起こった」というゆがんだ認知を明確化・自覚した上で、実際に電車に乗り、発作が起こらないことを事実として確認していくといった方法があります。
パニック障害の人に
言ってはいけない言葉は?
パニック障害でお悩みの方をご家族、ご友人をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。一緒に時間を過ごしていると、発作を間近で見ることもあります。
そういった時に、良かれと思ってかけた言葉が、パニック障害の方をひどく傷つけたり、場合によっては症状を悪化させるきっかけになったりといったこともあります。
特に、以下のような言葉は避けるようにしてください。
「また発作?」「こんなところで困るよ」
パニック発作は、突然の症状が繰り返されます。何度も間近で見ていると、「またか」という気持ちが出てきてもおかしくありません。
しかし当然ですが、そういった気持ちを言葉にしてしまうと、言われた本人は深く傷つきます。治療が可能な病気ですが、その場では「どうしようもない」ことであると理解してあげてください。
「気持ちの持ちようだよ」「甘えじゃないの?」
そもそもパニック障害は、心が弱い人がなるというものではありません。むしろ、何事に対しても全力で取り組む人がたくさんいます。
批判するような言葉は、ご本人のストレスとなり、場合によっては、症状を悪化させる原因になってしまいます。
「考えすぎだよ」
パニック障害の人は、発作への恐怖心から、電車に乗れない・出社できない・外出できないといった状態に陥ることがあります。
まわりの人からは、「考えすぎ」に見えてしまうかもしれません。しかし、発作の辛さ、恥ずかしさは、ご本人にしか分かりません。忘れようとして忘れられるものではないのです。
「落ち着いて」
これもついつい、言ってしまいそうになる言葉です。
特に目上の人から「落ち着いて」と言われると、ご本人はよけいに緊張を強いられてしまう可能性が高くなります。