気分が沈む・無関心…
集中力が低下するうつ病
うつ病とは、気分が沈み憂うつになる、無関心、やる気が出ない、集中力の低下、興味がわかないなどといった精神症状に加え、不眠や疲労感、倦怠感などの身体症状が認められる病気であり、気分障害の1つです。
なお気分障害は、大きく以下の3つに分けられます。
大うつ病性障害
一般的なうつ病は、この大うつ病性障害に分類されます。過去の経験やストレスを原因として脳の機能障害が起こり、心と体のエネルギーが極端に低下します。さまざまな要因が絡み合って発症することが多く、自己判断や家族のサポートだけでは解決しづらいため、早期発見、早期治療が大切です。
双極性障害(躁うつ病)
気分が沈む「うつ」の状態と、反対に気分が異様に高揚し開放的になったり怒りっぽくなったりする「躁(そう)」の状態が繰り返されます。
うつ病と誤って診断されるケースもあります。
持続性気分障害(気分変調症)
気分の落ち込み、意欲の低下、集中力の低下などが持続的に続き、慢性化した病気です。
自分の性格だと無理に受け入れて、受診・診断に至らないケースが多くなります。
「うつ病」は病名であり、単に気分が塞がっていることを指す「うつ(うつ状態)」とは明確に分けて使用します。「うつ(うつ状態)」を伴う疾患・障害には、上記した双極性障害、持続性気分障害の他、適応障害、不安障害、統合失調症、認知症、甲状腺機能障害、糖尿病なども挙げられます。
うつ病の原因は?
うつ病の原因は、実は未だはっきりと解明されていません。
現時点では、感情・意欲を支配する脳の働きに異常が生じているものと考えられます。そしてその異常を引き起こすものとして、以下のような因子が指摘されています。
うつ病のタイプごとに、その因子をご紹介します。
外因性
外からの因子によって引き起こされるうつ病を、外因性うつ病と言います。
- 機能障害を伴う疾患
- 脳の機能低下を引き起こす外傷、薬の副作用
心因性
心の因子、つまりストレスによって引き起こされるうつ病を、心因性うつ病と言います。一般的には“喜ばしいこと”とされる結婚や昇進、進学などをきっかけにうつ病を発症することもあります。
- 仕事、家庭、学校、恋愛などにおける人間関係
- 仕事、学校などにおける評価・成績
- 経済的問題、介護問題
- 家族など大切な人の不幸
- 大災害
- その他環境の変化
内因性
外因性、心因性のいずれにも当てはまらないものを、内因性うつ病と言います。
主に、以下のような性格や気質、認知の因子が影響します。
- 自分を責める、独りで悩む
- 真面目、完璧主義
- 凝り性
- まわりの人に過度に気遣う
うつ病に
なりやすい人の特徴
他の多くの病気と同じように、「こういう人は必ずうつ病になる」あるいは「こういう人は絶対にうつ病にならない」と言うことはできません。
しかし、以下に該当する場合には、そうでない人と比べてうつ病になりやすい傾向があると言えます。
- 日々の生活が楽しくない
- 楽しもうとするが、楽しめない
- これまで好きだったことに関心が持てなくなってきた
- 以前は積極的に行っていたことが、おっくうに感じられる
- 自分が何の役にも立たない存在のように思える
- 疲れるようなことをしたわけでもないのに、しんどい
なお、上記のうち2つ以上に当てはまり、それが2週間以上続いている場合には、すでにうつ病を発症している可能性があります。
気になる場合には、お早めに当院にご相談ください。
うつ病の症状
うつ病の症状を、精神的症状と身体的症状に分けてご紹介します。
精神的症状
- 気分が沈み、憂うつ
- 自分を必要以上に責めてしまう
- 自分が役に立たない存在に思える
- 集中力の低下
- やる気、関心、興味の低下
- 物事をネガティブな方へと考えてしまう
- ふと死にたい、消えてなくなりたいと考える
身体的症状
- 不眠
- 食欲不振
- 動悸
- 吐き気
- 下痢
- 体重減少
- 動作緩慢、あらゆる動作が遅くなる
- 性欲減退、ED
うつ病の方は、「自分がうつ病かもしれない」という考えにさえ至っていない場合が少なくありません。また、それまで明るく元気に過ごしてきた人ほど「自分がうつ病なはずがない」と考えてしまいがちです。
ご家族や職場の方などの気づき・指摘があってやっと受診できたという方もいらっしゃいます。周囲から症状を指摘されたり、受診を勧められた場合にも、一度当院にご相談ください。
うつ病の診断基準
以下の9項目のうち5つに該当し、そこに「抑うつ気分」または「喜びや興味の著しい低下」が含まれる状態が2週間以上続いた場合に、うつ病と診断されます。
- 抑うつ気分
- 喜びや興味の著しい低下
- 気力の低下、疲労感
- 集中力や思考力の低下、決断ができない
- 食欲不振と体重減少、食欲増加と体重増加
- 不眠、過眠
- 精神運動の焦燥または制止(じっとできない、動き回る、もしくは話し方や動作が遅くなる)
- 無価値観(自分に価値がないと感じる)、過剰または不適切な自責
- 死ぬことを繰り返し考える、自殺の計画を立てる
ご自身で感じる症状だけでなく、「まわりの人からこのように指摘された」という情報も、医師にお伝えください。
患者さまのご同意があれば、診察後にご家族に症状について説明することも可能です。
うつ病の治し方
うつ病の治療では、まずは休息と薬物療法、そして症状が落ち着いてから精神療法を取り入れるのが基本です。
休息
ベッドでずっと横になるというよりは、ゆったりとした時間の中で、生活環境を整えていきます。
- 自宅や自室の環境を整える
- 睡眠時間をしっかりと確保する
- 無理のない範囲で、生活リズムを整える
- 勤務時間の短縮、部署移動、休職を検討する
- 人間関係を見直す
心身が休まる環境というのは、患者さまによって異なります。ご家族はもちろん、職場・学校などとの連携が必要になることもあります。
薬物療法
抗うつ剤を使用し、心身の安定を目指します。
たくさんの種類がありますので、症状やご希望、副作用の出やすさなどに応じて、お薬を選択します。
抗うつ剤の副作用としては、以下のようなものが挙げられます。
- 下痢、便秘
- 吐き気
- 胃の痛み
- 体重増加
- 不眠、過眠
- 口内の乾燥
- めまい、ふらつき
近年は、副作用の少ない抗うつ剤も登場しています。
精神療法
医師や公認心理師などの専門家との面談によって、問題の改善・解決を目指します。
通常、休息・薬物療法などで症状を落ち着かせてから、精神療法を導入します。
うつ病のよくあるご質問
うつ病は、治る病気なのでしょうか?
はい。継続して、適切な治療を行っていくことで、ほとんどのケースで改善が認められます。
「自分で治そう」とせずに、早期に医療機関に相談することが大切です。ぜひ当院へご相談ください。
治療の効果が現れるまで、どれくらいの期間がかかるのでしょうか?
症状の程度にもよりますが、早ければ治療開始後1~2カ月で、平均だと3カ月~半年ほどで治療の効果が現れます。ただ、うつ病の治療で焦りは厳禁です。患者さまもご家族も、できる限りゆったりとした気持ちで治療に臨みましょう。
うつ病と診断されたら、休職・休学は必要ですか?
必ず休職・休学をするというわけではありません。実際に多くの方が、仕事・学業を継続しながら治療に取り組み、症状を改善させています。
ただし、早急な休職・休学が必要なケース、途中で必要になるケースというものもあります。