強迫性障害(強迫神経症)

繰り返し確認する
癖や強い不安で
体調をくずしてしまう…
強迫性障害

繰り返し確認する癖や強い不安で体調をくずしてしまう…強迫性障害強い不快感・不安感のことを「強迫観念」、そしてそれを解消するための行為を「強迫行為」と言い、この2つをセットで繰り返してしまうのが「強迫性障害」です。
一例をあげますと、「手が汚れているのではないかと気になって仕方ない」というのが強迫観念、「そのために1日に何十回と手を洗ってしまう」というのが強迫行為です。
人間関係がうまくいかなくなる、行動に制限が生じるといったことで社会生活に支障をきたすことも少なくありません。また自分でも、おかしなことをしているという自覚があるため、患者さまご本人がとても辛い想いをすることがあります。

強迫性障害の原因は?

はっきりとした原因は解明されていませんが、仕事や人間関係のストレス、妊娠・出産、遺伝などの影響によって発症するものと考えられています。

なりやすい人の性格とストレスとの関係

強迫性障害になりやすい人の特徴として、神経質、几帳面、こだわりが強いとったものがあげられます。
こういった性格の方は、仕事や人間関係などでのストレスを感じやすく、発症へとつながることが多いものと考えられます。

強迫性障害
セルフチェック

強迫性障害のセルフチェック方法をご紹介します。

5つのチェックポイント

  • 手が痛くなる、カサカサになるくらい何度も手洗いをしてしまう
  • 自宅を出てから、鍵やガスの元栓を閉めたか、電気を消したかといったことが気になって仕方ない
  • ありえないようなこと(自分が誰かに危害を加えたなど)について、繰り返し考えてしまう
  • まわりの人や以前の自分が当たり前にしていたことをするのに、異常な時間・労力を要する
  • 順番通りであるかどうか、左右対称であるかどうかといったことが気になって仕方ない、直したくなる

上記のうち、2つ以上当てはまり、それにより日常生活に支障をきたしているという場合には、一度当院にご相談ください。

強迫性障害の症状

強迫性障害では、強い不快感・不安感を伴う強迫観念によって、以下のような強迫行為が繰り返されます。

不潔恐怖・洗浄

  • 手や体、服が汚れている気がして、手洗い・入浴・洗濯を必要以上に行う
  • 手すりやドアノブなどが汚れているように感じられて触れられない

加害恐怖

  • 誰かに危害を加えたのではないかと考えてしまう
  • またその加害がテレビ・新聞で報道されているのではないかと思いチェックする、まわりの人に尋ねてしまう

確認行為

  • 外出後、自宅の鍵やガスの元栓の閉め忘れ、電気の消し忘れをしたのではないかと気になる
  • また実際に本来の目的(出勤・待ち合わせ等)を後回しにして、確認をするために帰宅してしまう
  • またその確認も念入りで、指さし確認、じっと見て確認するなどの行為に至る

儀式行為

  • 自分の決めた手順で物事を進めないと恐ろしいことが起こるという不安にさいなまれる
  • また常にその手順で物事を進めようと強いこだわりを見せる

数字へのこだわり

  • ラッキーナンバーや不吉な数字、縁起の良し悪しに限度を超えてこだわる
  • またその数字を選べなかった場合に異様に不安を感じる

物の配置・対称性へのこだわり

  • 物が正しい位置にあるか、左右対称であるかといったことに限度を超えてこだわる
  • またそうでない場合に異様に不安を感じる

強迫性障害の診断基準

ICD-10

強迫観念や強迫行為、またその両方が少なくとも2週間以上続き、ほとんど毎日苦痛を感じている・生活に支障をきたしている場合に診断されます。
主に、以下のような特徴を持ちます。

  • 症状自体が楽しくなく苦痛である
  • 強迫観念、強迫行為が何度も繰り返される
  • 強迫観念、強迫行為について、通常の考え・行為でないことを自覚している

DSM-5

チック症状を含む強迫性障害です。
主に、以下のようなチック症状が見られます。

  • 咳払い
  • 瞬き
  • 首の運動

なお、DSM-5はさらに以下の2つに分類されます。

認知的タイプ

強迫観念に囚われて、以下のような強迫行為を繰り返してしまうタイプです。

  • 手や体が汚れている不安に襲われ、過剰な手洗い・入浴をする
  • 自分を醜いと認識し、化粧品を必要以上に買い込んだり、繰り返し美容治療・手術を受ける
  • これを捨てると後悔するのではないかという不安から、物を捨てられず、生活空間の邪魔になるほどため込んでしまう

運動性タイプ

強迫観念から、以下のような強迫行為を繰り返します。

  • 鍵がかかる音、鍵が締まる音が自分の納得のいくものでないといった場合に、納得がいくまでその行為を繰り返してしまう
  • ニキビ、皮膚のざらざらした感覚を不快に感じ、かきむしってしまう
  • 毛髪、体毛を抜きたい衝動にかられ、実際に自分で抜いてしまう

強迫性障害の治し方

強迫性障害の治療では、認知行動療法と薬物療法を行います。

認知行動療法

強迫性障害における認知行動療法では、「曝露反応妨害」を行うのが一般的です。これまで患者さまが避けていた状況にあえて直面してもらい、その上で強迫行為をできるだけしないよう試みる、という方法です。
最初は強い不安を感じ、強迫行為をしてしまうことがありますが、繰り返すうちに不安が和らいでいきます。「強迫行為をしなくても大丈夫なんだ」と改めて知ることで、強迫行為も起こりにくくなります。

薬物療法

強迫性障害で主に使用するのは、「抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)」です。脳内の神経伝達物質であるセロトニンの量を調整する薬です。
服用開始後、早ければ2~3週間で症状が軽減します。患者さまごとに服用量を調整し、治療を継続していきます。
比較的副作用の少ない薬ですが、吐き気、口内の渇き、便秘、下痢などの副作用が出ることもあります。